2013年

4月

19日

50)桂馬の動き:昔は違っていたかも知れません(再考)

投稿25(2012年8月23日)にて一度取り上げた話題です。再度まとめてみたいと思います。まず、桂馬の動きの確認ですが、下の左が現代将棋の桂馬、右が中世の将棋の桂馬の動き、と思われるもの、です。○の位置に駒を飛び越して動くことができます。

 

ー○ー○ー   ○ーーー○

ーーーーー   ーーーーー

ーー桂ーー   ーー桂ーー  

 (現代)    (中世)

 

古文書の記載を見る限り、桂馬の動きは今とは違っていたと思わざるを得ません。以下、その手がかりを列挙しました。投稿25)もご参照下さい。 本来ですと、古文書の画像もつけるべきですが、まだ申請をしていません。すいません。


1)摩訶大将棋図(聆涛閣集古帖・戯器)
次のサイトの中ほどにあります。駒の動きが点で示されています。
http://www.rekihaku.ac.jp/publication/rekihaku/130witness.html
拡大して見て下さい。点はななめ上の方向に2つ付いています。


2)象棊纂圖部類抄(未申請ですので、図面を公開することができません)
摩訶大将棋の初期配置図に、1と同様、駒の動きが点で示されています。
この図の点については、ななめ45度でなく、多少角度が小さいのではないかという見解もいただいていますが、ななめ方向に点がついている以上、現代将棋の桂馬の動きだという解釈は難しいと思っています。古今将棊圖彙には、江戸時代の小将棋(=現代将棋)の桂馬の動きが点で記載されていますが、ひとつ目の点がななめに、二つ目の点がその上についています。現代将棋の桂馬の動きの場合、このような点のつけ方になるのではないでしょうか。


3)象棋六種之図式
原本は未確認で、復刻本での確認ですが、やはり、上の2件と同様、ななめ上に2つの点がついています。


4)二中歴の記述
桂馬の動きは、「桂馬前角超一目」と書かれています。ななめ前の2目に飛び越す動きと解釈する方が妥当に思えます。


5)普通唱導集の記述
「仲人嗔猪之合腹 昇桂馬而支得」と書かれています。
この表現がどのような盤面を表わしているのかということが、これまで書籍やWebで説明されてきましたが、現代の桂馬の動きで説明が試みられているために、どれもあまり納得のいく説明となっていません。桂馬がななめ2目に飛ぶとしますと、うまく説明可能です。この件、投稿25)を参照下さい。


以上が、古文書の記載との関連です。しかし、このことはさておき、摩訶大将棋を実際に指してみますと、桂馬がななめ2目に飛ぶのは(ナイトの動きでなく)、非常に自然です。つまり、ななめ方向に動く角行や飛龍との連携が、自然な戦法として使えます。では、桂馬の動きは、なぜ変わってしまったのでしょう。以下、書きたい放題となります。

 

将棋の流行の大雑把な流れは次のとおりと見ていいでしょう。
大型将棋 --> 中将棋 --> 小将棋(=現代将棋)

 

上の流れを見てわかるとおり、小将棋の駒(歩・香・桂・銀・金・角・飛・玉)のうち、ある期間、桂馬は将棋の駒から完全に姿を消してしまいます(中将棋に桂馬の駒はありません)。他の駒は全部残り、桂馬だけが姿を消しました。あり得る可能性として、桂馬の動きは、小将棋が新しいルールで再構築されたときに変更されたと考えるのはどうでしょうか。このとき、小将棋に持ち駒ルールも導入されたのかも知れません。

 

ともかくも、14世紀以前の古文書に、今の桂馬の動きと思われる記述は見つかっていません。今と同じなら、何より桂馬の動きは奇妙なはずで、であるのに、そのことは書かれていなさそうです。

 

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コメント: 6
  • #1

    mizo (日曜日, 21 4月 2013 00:58)

    将棋類の先祖は「チャトランガ」というのが定説だと思いますが、「馬」にあたる駒の動きは八方桂馬です。
    チェスの「ナイト」(騎士)、マークルックの「マー」(馬)、シャンチー・チャンギの「馬」など、世界の将棋類すべてに動きが共通している馬と関係がある名称の駒があることをどうお考えでしょうか。

    また、「二中歴」の記事は「将棋」(小将棋)が記録上最初の将棋であることを示していると思いますが、以下のご意見の根拠は何でしょうか。

    「将棋の流行の大雑把な流れは次のとおりと見ていいでしょう。
    大型将棋 --> 中将棋 --> 小将棋(=現代将棋)」

  • #2

    長さん (月曜日, 22 4月 2013 16:05)

    両方有ったんでしょう。
    海を隔てているとは言え、シャンチーには馬があるし、チャンギには
    象があるので、縦と横軸で、進み方のばらばらな駒は、日本の将棋に
    も取り入れられやすい環境ですし。ちなみに、日本でも少し指された、
    七国将棋には、更に極端な、騎という駒がありますね。桂馬跳びの
    桂馬が、だから昔から有っても一応おかしくはないと、私は思います。
    他方、ここで御説の、飛龍型桂馬は、文献で多数駒将棋が伝承される
    うちに、作られたのだと思います。エクセルで言う「罫線」や升目を、
    墨で書いて、古文書で表現するのが面倒なため、古文書で表現しやすく
    する為の多数駒将棋ルール、(ようするに実用性謎、)が、長い年月
    で形成されたのでしょうね。多数駒将棋の飛龍型桂馬は、小将棋しか
    指さない、船乗り等で知る者が無いため指摘する者も無い、上流階級
    の桂馬ローカルルールだったのかもしれないと私は思います。

  • #3

    T_T (火曜日, 23 4月 2013 20:39)

    mizoさんへ

    コメントありがとうございます!

    八方桂がなぜ日本の古典将棋にないのかは私にはよくわかっていませんが、同じ理由で、八方桂の前方だけバージョンの桂馬も導入されなかったのだろうと思います。ただ、ある時期の小将棋(平安将棋でない小将棋)からは今の桂馬の動きになったはずですので、その頃には、八方桂の動きが知られていたことになります。師子の動きのルーツも八方桂だとする考え方があるそうですが、そうだとすると、大型将棋が作られた頃には八方桂が知られていたのでしょうか。

    諸象戯図式や中将棋初心鈔の記述を見ますと、もともとの獅子は1目には着地できなかった可能性もあり、八方桂ルーツ説のひとつの裏付けにもなります。師子の不正行度2目踊りがまず作られたとすれば、師子と狛犬のペアでの導入は、同時でなかったことになります(狛犬が後:大将棋には師子だけというのも当然かと)。師子の動きの問題、師子と狛犬の導入時期の問題については、面白い話題ですので後日にまた本ブログに投稿します。

    いずれにせよ、古文書からは、大型将棋の桂馬は八方桂とは無縁だったのではないでしょうか。小将棋の桂馬は、ある時期(大型将棋が消えてしまった時期)、八方桂的な動きになったのではと考えています。

    馬という名称の駒が世界では八方桂に対応している件ですが、これについても私にはよくわかっていません。投稿27)宝応象戯の・・の中で書きましたように、個人的には、桂馬=宝応象戯の天馬に相当、なのかなあと思っています。将棋の伝来は、実物ではなく、宝応象戯という物語によりなされた、という思いつきが個人的には気に入っています。

    最後の、「将棋の流行の大雑把な流れ」と書いた件ですが、抜粋で書いています。
    平安将棋 --> ?? --> 大型将棋 --> 中将棋 --> 小将棋
    これと並列して別の流れがあったかも知れませんが、とりあえず、ある時期に桂馬の駒がなくなっているという点に注目したいという意図です。

  • #4

    T_T (火曜日, 23 4月 2013 21:13)


    長さんへ
    コメントありがとうございます!

    考え方で諸説あり得ると思います。ローカルルールだった可能性や、別の将棋があって、そこには桂馬跳びの桂馬があったのかも知れません。ですが、古文書にはそのような記述はなく、文献に出てくる桂馬は、宝応象戯の天馬のような桂馬、飛龍型の桂馬ばかりです。

    摩訶大将棋の復刻については、文献至上主義でいきたいと思っていますので、現状では、摩訶大将棋の桂馬を飛龍型として復刻しています。新発見の古文書に異なる記述があった場合や、現存の古文書から別の解釈が可能な場合、再検討をと考えています。

    文献に頼るのはベストでない可能性もありますが、文献に矛盾がない限りひととおりに決めることができますので、復刻という作業には利点です。現状、飛龍型の桂馬と考えて文献上の矛盾が出ていません。一方、桂馬跳びの桂馬(文献上の根拠はありませんが)と考えると、普通唱導集の記述の意味が解けません。

  • #5

    mizo (木曜日, 25 4月 2013 23:00)

    しつこいようですが、配置の問題はどうでしょうか。
    飛龍型桂馬は、行き先が1箇所しかない初期配置で不自然ではないでしょうか。

    通説   飛龍型
    ◎_◎_ ___◎
    ____ ____
    香桂駒駒 香桂駒駒

  • #6

    T_T (木曜日, 25 4月 2013 23:33)

    mizoさんへ
    コメントありがとうございます!

    確かに、と思いました。小将棋についてはあり得るかもと思いました。
    ただ、大将棋では、桂馬と飛龍が同じ列にいますので、片側に行けないというのは理由として不成立になります。摩訶大将棋については、桂馬は端から3列目ですので、やはり対象外となっています。