2015年

11月

27日

179)大大将棋の成りについて:成りの原型か

大大将棋は、将棋黎明期(平安時代)における大型将棋のひとつで、摩訶大将棋の後に作られた将棋だということがわかっています。ですので、原初の将棋というわけではありません。しかし、成りの形式を見たとき、大大将棋の成りは、最も古い規則性を残しています。


駒が成るというルールの起源は、どこにあるのでしょう。大大将棋の成りを題材にして、このことを検討してみたいと思います。本稿では、ひとまず、shatranjおよびその発展形の成りが、成りの原型であるという前提で話しを進めていきます。大型系shatranjの成立が、12世紀以前であることはわかるのですが、shatranj系列の成りが、最も古い成りの形式なのかどうかは、私自身、不明です。調査中です。


shatranjから導かれる成りの基本1は、歩兵(pawn)が金将(general)に成ることでしょう。次いで、大型系shatranjでは、成りの基本2として、同じ列の最下段の駒に成るという規則があります。古代の将棋類の成りの規則については、この2パターンしかありません。


shatranj系列の成りの規則が方々に広まったとして、この基本パターンから外れれば外れるほど、その将棋の成立時期は、古代から遠のいていると見ていいでしょう。たとえば、二中歴の平安将棋では、歩兵以外にも金将に成る駒があるという程度の外れ具合ですが、大型将棋の時系列の最終に位置する中将棋では、成りの規則性というべきものは、もはや見られません。それどころか、成り先に選ばれている駒自身が、また別の駒に成るというルールまで採用しています(たとえば、角行 --> 龍馬 --> 角鷹)。成る(promote)というルールでは、shatranj系列や、摩訶大将棋、大大将棋に見られるように、成り先の駒は、本来的に不成りなのです。

 

さて、上記の成りの基本2が残されている将棋が、大大将棋です。成りの全部が同じ列の最下段の駒になるわけではありませんが、これは、若干の修正を経た形が大大将棋として成立したためでしょう。ともあれ、大大将棋では、成り先となっている最下段の駒は不成りなのです。これを古代ペルシアの名残りだと見るかどうか。以下の図をもとに、説明していきます。 

図1.
図1.
図2.
図2.

図1は架空の初期配置です。このような大型将棋はありません。図1は大大将棋の初期配置を少し並べ変えたもので、駒の数と種類はそのままです。本当の大大将棋は図2のとおりです。図1、図2ともに、成り先の駒は、水色に塗っています。もし、大大将棋が図1のような形で古文書に残っていたとしたら、大型シャトランジ系列の伝来を、皆さんは信じただろうと思います。図1の配置ならば、同じ列の最下段の駒に成るという規則になっているからです。


図1の水色の駒のすぐ上にある駒が、成り元の駒です。大大将棋では、図1の配置が、いろいろな理由で、多少ばらついたものと考えてみて下さい。これが図2で、つまり、大大将棋というわけです。図2では、成り元の駒にも色をつけ、黄色に塗っています。ばらばらになってしまったため、最下段の駒になるという特徴は目につきにくくなっていますが、それでも、飛龍-方行、行鳥-龍王、猫又-奔鬼等6ペアがまだ残っています。いかがでしょうか。

 

大大将棋では、麒麟と鳳凰は中央の列の大駒を成り先とします。摩訶大将棋でも同様で、麒麟と鳳凰は中央の列にある、師子と狛犬に成るのです。こういうような対応の件、しばらく問わずにおきまして、大大将棋の麒麟と鳳凰が、そのすぐ下の、奔獏と奔王に成ったのではないだろうかと空想してみるのは楽しいことです。奔獏の駒の強さを考えれば、大大将棋になる前の将棋(たとえば、図1)では、麒麟の成りは奔獏だったのかも知れません。


麒麟が奔獏に成るということを考えたとき、私には、投稿168)にて書きました天理参考館の角端のことが思い出されます。角端は麒麟の一種なのですが、霊獣の獏と見てもいいような姿をしているのですから。そして、鳳凰の成り先が奔王、これも同じルールが後世の大将棋に残っているということが気になってくるわけです。


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コメント: 3
  • #1

    mizo (土曜日, 19 12月 2015)

    お考えをお教えください。

    》次いで、大型系shatranjでは、成りの基本2として、同じ列の最下段の駒に成るという規則があります。

    shatranjは立体駒ですが、成ったことをどうやって示したのでしょうか。
    「チェス」では、取られた駒の再利用が基本で、取られた駒がない場合は、(「クイーン」に成ることが多い)取られたルークを逆さにして使ったり、一マスに二個「ポーン」(一つは取られたもの)を置いたりしているようです。

  • #2

    T_T (土曜日, 19 12月 2015 18:19)

    mizoさんへ
    コメントありがとうございます!

    すいません、shatranjの細かな点については現在勉強中です。最近、将棋だけでなく、盤双六の方にも、テーマを展開していますので、のんびりとした進み具合になっています。

    shatranj系列の成りは、駒の置き替えだと考えています。ですので、成り先の駒がまだ盤面にあるうちは、pawnは一番端の位置で、成り先の駒が使えるようになるまで(成り先の駒が取られるまで)待っていなければなりません。同じ列の駒に成るというルールからすれば、この方法が妥当です(どの駒になるpawnなのかがすぐにわかるという意味で)。ただし、文献からは確かではありません。

  • #3

    mizo (土曜日, 19 12月 2015 21:18)

    お考えよくわかりました。
    使えるようになるまで待つというのはリアリティがありますね。
    ありがとうございました。