どうして今まで気づかなかったのか、不思議です。象棊纂図部類抄の中将棋のところには、次のようにはっきりと書かれています。この部分は何度も読んできたのですが。でも、気づきませんでした。
師子居喫 一枚二枚可随時 (師子ノ居喰イ、一枚二枚時ニ随ウベシ)
喫は「食う」の意味で、居喫は居喰いのことです。ここまでは問題なかったのですが、「一枚二枚可随時」を読み流してしまっていたということです。居喰いは一枚でも二枚でも随時可能、と読んで何の問題もありません。そのとおりの意味で捉えるべきでしょう。
居喰いで隣接する2駒を同時に取れることは、師子が2目踊りであることからも自然です。2目踊りの駒は2駒まで取ることができますので。不正行度のジグザグ踊りで2駒捕獲するのと同様、居喰いでも2駒捕獲できるようです。王将の動きを2回続けて動く、という便宜上の説明では居喰い(駒のところに行って、また元の位置に戻る)では、1駒捕獲が当然と考えることになりますが、師子の機能は、投稿42)のところでも書きましたとおり、踊2目と踊1目のふたつの機能です。踊2目で2駒捕獲、踊1目(=居喰い)でも2駒捕獲と考えてみました。
としますと、3目踊りの狛犬は、居喰いで3駒同時の捕獲ができると解釈していいかも知れません。ただ、狛犬に敵駒3駒が隣接した状況でこちらの手番というケースはないとは思いますが。
この件、ゲーム学会の全国大会前に気づき発表したかったのですが、結局しませんでした。いかがでしょう?
最後に、踊りの定義について、再度考えてみたいと思います。これまで、踊りの定義として、
投稿36)では、1手で複数個の駒を取ることができる機能、
投稿42)では、着地位置で駒を取るのではなく着地しない位置で駒をとることのできる機能
と書きました。本投稿での居喰いは、たまたま、この2件の定義のどちらもを満たしています。
踊り1目=居喰い、という可能性は結構ありそうです。残る問題は、踊り1目に「1目歩く」だけの機能を入れるべきかどうかという点なのですが、現時点では、1目だけ歩くことはできない、という考え方でいます。まだ調査中で、この件、近日中にまた投稿します。
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長さん (火曜日, 05 3月 2013 11:41)
常々思うのですが。ひょっとして、「踊り」については、
「現代に、その意味が伝承され無かった」事自体が、
何なのかを解明する、一つのヒントなのでは?
つまり、この言葉の意味は、元々相当煩雑だったため、
それが原因で、忘れ去られてしまった可能性があるのか
もしれないと、私は思います。
mizo (水曜日, 24 4月 2013 06:14)
少なくとも現在の中将棋の獅子には、二枚居喰できるという説はないと思います。
現在動きが判明している駒について、過去は別の動きであったという考えには抵抗があります。現在の動きに変化するときのトラブル多発の記録がないからです。
T_T (水曜日, 24 4月 2013 22:14)
現代中将棋のルール(江戸時代の棋譜で確認可能なルール)はきちんと確立されており問題点は全くないと思っています。獅子の居喰いも1枚です。
本稿で話題にしていますのは、象棊纂圖部類抄の時代(15世紀以前)の師子で、古文書を読み解く限り、多少違っていたのではないでしょうか。古文書の記載のみを問題にしています。師子の件、また後日に投稿予定です。