54)摩訶大将棋の自在王: 反則負けについて

玉将に成りがあるのは将棋の中では摩訶大将棋だけですが、その成り駒が自在王です。この名称からはいろいろな解釈ができますが、摩訶大将棋と日蓮宗の関連を考慮すると、自在王は、世自在王仏のことなのだろうかと思ってしまいます。世自在王仏は阿弥陀仏の師とされる仏だということなのですが、この点、日蓮宗と関連深いように感じました。ここのところは、機会あれば専門の方におうかがいをと思っています。ともかくも、玉将に成りが設定されており、それが自在王だということは、摩訶大将棋の大きな特徴とすべきだろうと思います。


さて、自在王の動きですが、象棊纂圖部類抄には次のような記載があります。
「越馬不正行度秤面イヅクト云コトナシ行キタキ所任意ツナギタル馬ヲバ不取之」
(なお、原著にカタカナ部分の濁点はありません)


秤面は線が引かれている面ということで将棋盤の盤面の意味なのでしょう。自在王は、その名前のとおり、盤面のどこにでも行けるという動きになっています。この動きを、越馬不正行度と表現していますが、きちんと書くとすれば、何目でも跳べるという情報を入れて、何目デモ越馬不正行度、となるのでしょうか。不正行度というのは、秤目に沿っていないということだろうと思います。つまり、進む方向が、前後左右、ななめ45度の方向ではないということでしょう。「踊」ではなく「越」ですので、間の駒を取ることはできません。


どこにでも行けるわけですが、条件がひとつあって、相手の駒が利いている場所には行くことができません。駒の利いている場所にいけば、取られてしまって負けになるわけですから、とりたててルールとする必要もなかったように思うのですが。。。


そこで、「摩訶大将棋に反則負けはない。駒の動きを間違った場合は指しなおすこととする」という考え方があったかも知れません。もし、駒の移動ミスによる反則負けがルールとしてあったとすれば、自在王の動きの記載として、「ツナギタル馬ヲバ不取之」は不要となります。つまり、駒の利いている場所に動いた場合、即負けとするなら記載は不要です。負けにしないなら、即負けになる動きを禁則ルールとした上で、ルール違反(動き間違い)は指しなおし、ということです。自在王の動きを間違ってしまったので負け、というのは考えにくいです(そもそも、利いている駒に取られて負けは確定ですので)。摩訶大将棋は駒数も多く、動きも複雑だということもあり、動き間違いは気づけば指しなおしていたのではないでしょうか。勝ち負けを、そういうところでは(駒を動き間違えたので負け、とかで)、決めたくなかったのでしょう。


なお、本稿では、自在王が動くときは駒を取りに動くという前提で書いています。記載された文面では、駒をとらないならどこへでも行くことが可能という書き方ですが。

 

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コメント: 4
  • #1

    mizo (水曜日, 01 5月 2013 08:23)

    動きのミスが多かったと思われることは同感です。

    余裕のある人たちの消閑の遊戯ですから、賭けが行われていても、後味の悪い反則勝ちはなかったと思われます。指し手は限られているので、ゆるいルールで楽しんだのではないでしょうか。
    相手が反則手を指したのに気づいたら指摘し、指し直して再開、気づかず自分の手をさした場合は、容認となって継続したと思われます。

  • #2

    長さん (水曜日, 01 5月 2013 08:29)

    自在天王「繋った駒は取れ無い」ルールは、相手玉駒の、取り込み
    即死ではゲームが面白く無いので、考え出したのだと私は思います。
    「相手が即死になる玉取り禁手」のルールでも良かったのですが、
    もっともらしくする為、自在天王繋ぎ駒取り込み禁止にしたのでは?
    このフレーズの付加には、上記の意味が有ったと思います。

  • #3

    kazu (水曜日, 01 5月 2013 23:13)

    駒取り可能であれば、王将へのただ捨て以外で
    自在天王のみ法性と教王を盤上から排除できる可能性があることになりますね。

  • #4

    T_T (日曜日, 05 5月 2013 00:31)

    コメントありがとうございます!!!

    mizoさんへ
    私もそのように思います。かなりの頻度で賭けていたでしょうし、駒の動かし間違いで負けが決まってしまうのは問題ですよね。

    長さんへ
    確かにご指摘どおりかと。この件、反則負けの話題の方に気をとられ、忘れてしまってました。たとえ相討ちだとしても先に取れば勝ちですので、自在王で玉将をとるのは何らかの制限つきにする必要があったわけですね。なお、駒の名称ですが、自在王で確定ではないでしょうか。象棊纂圖部類抄(一番古い)、諸象戯図式(次に古い)とも、自在王となっていますので。自在天王という名称は、後世の古文書での書き間違いまたは創作ということになるかと思います。

    kazuさんへ
    自在王で法性、教王を取るという問題、奥が深くてまだ解釈できていません。これは、法性で法性を取る場合にもあてはまるのですが、また後日、投稿いたします。