投稿76)とmizoさんからのコメントで、「踊り」の意味がはっきりとしました。踊りとは、繰り返すことですが、この意味は古語辞典には、全く載っていません。踊り字、踊り駒。言われてみれば、気づくのですが、ずっと気がつきませんでした。踊り字という表現についても、江戸時代から使われているようですので、古語辞典に載せていい単語ではと思います。
今日は、枕草子に出てくる「踊り」について書きます。実は、枕草子では、踊りといっしょに、師子と狛犬が出て来るのです。枕草子の原文では、師子でなく獅子なのですが、本稿では、原文以外は、師子と書くことにします。
枕草子の成立は、996年~1008年ごろとのことです(世界大百科事典)。異本が多いらしいのですが、本稿では、三巻本を参照しました。「獅子・狛犬」の語句は3回登場します。以下、そのうちの2件です。
1)おはしまし着きたれば、大門のもとに高麗、唐土の楽して、獅子・狛犬をどり舞ひ、乱声の音、鼓の声にものもおぼえず。
2)還らせ給ふ御輿のさきに、獅子・狛犬など舞ひ、あはれさることのあらむ、ほととぎすうち鳴き、頃のほどさへ似るものなかりけむかし。
原文の「舞ひ」は現代で使う「舞う」と同じ意味のようです。上の1)では、「をどり舞ひ」、2)では、「をどり」はなく「舞ひ」だけです。ところで、この1)の文章は、古語辞典の「踊る」の項目のところで、よく例文として引用されている文章でもあります。意味は、文字通り、踊るです(たとえば、旺文社の古語辞典
第9版)。舞うと踊るは、厳密には違うらしいのですが、枕草子の現代語訳では、1)も2)も、結局は、踊り舞うということになっているようです。
ところで、本当にそうでしょうか。
「獅子・狛犬をどり舞ひ」の箇所ですが、師子狛犬が繰り返し舞う、と解釈するのはどうでしょう。踊る=繰り返す、です。そして、師子と狛犬は踊り駒。大型将棋の歴史ファンが、「師子狛犬をどり舞ひ」と聞けば、解釈はただひとつで、師子狛犬が繰り返し何度も舞う、となるでしょう。
をどり**、という表現はいろいろと多数ありますが、そのうちのいくつかは、繰り返し**する、の意味にとってもいいかも知れません。たとえば、踊り念仏という言葉も、当初は、繰り返して念仏を唱えるという意味が主体だったのではないかと思ってしまいます。念仏を繰り返すという動作が、踊りを伴っていたので、いつの間にか、「繰り返し」が、「踊り」にすり替わってしまったというのはどうでしょう。
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長さん (水曜日, 15 1月 2014 15:36)
将棋古文書文献の「踊り」は、将棋駒種「獅子」の出現と、何か関連
有りの感じですね。「獅子舞」自体、古くからありそうですから。ただ
特定文献「枕草子」との関連に関する御主張は、「獅子舞い」が現代
でも、余りにも有名な為、「知識を蓄積されずに、この文面を読んだ
現代の人」には、納得感がやや得にくい主張かな、とも、思いました。
T_T (木曜日, 16 1月 2014)
コメントありがとうございます!
古語の解釈については専門の方にお任せするしかありませんが、踊り駒、踊り字、踊り歩、踊り念仏、踊り題目とあるわけです。全部が、「繰り返し」ています。いわゆる「踊る」のは、後ろの2つだけ。
このうち、踊り字、踊り歩は江戸時代が起源で重要な観点ではなりますが、残る3つの、踊り駒、踊り念仏、踊り題目が、鎌倉時代、13世紀の起源が濃厚です。踊り題目、摩訶大将棋はここでもまた法華経と出会うことになりました。