165)同じ列の駒に成るというルール:shatranj variantsの伝来

最近、本ブログにて話題にしていますとおり、大大将棋の成りの規則は、一部の大型系列シャトランジの規則と類似しています。もちろん、このことだけからでは、shatranj variantsの伝来云々の議論はむずかしいのですが、成りの規則以外にも、勝ちの形式、王が2枚できること、駒の動き、駒の名称、駒の並び、成立した年代、といった互いに一致する多くのあれこれが、古代日本と古代ペルシアの将棋には存在しています。それら全部を考え合わせたとき、shatranj variants伝来の可能性は無視できそうにありません。


では、これまで、なぜ、shatranj variantsは軽視されてきたのでしょう。将棋の伝来について云々されるとき、たいていの場合、古代中国の将棋とマックルックだけが対象となってきました。これは、とても不思議なことです。もし、大型将棋を素直な気持ちで眺め、そして考えを巡らしますと ----将棋の歴史はほとんど知らないのに、大型将棋はよく知っているという立場からは---- ごく自然にshatranj variantsの伝来が見えてくるからです。


たぶん、一番の大きな原因は、大型将棋に対する間違った思い込みではないでしょうか。大型将棋は指されなかっただろう、そう考えてしまったことで、大型将棋への深い興味がなくなってしまった方が多数おられるような気がします。


駒数の少ない将棋から、駒数が徐々に増え、将棋は次第に大型化して、そのうち発展が終わる。。。このような一般論は、将棋の歴史には、全く当てはまっていないようです(シャトランジやチェスには当てはまっているようですが)。ですので、大型将棋に対する正しい認識を欠いた将棋歴史考や将棋史観はあり得ません。これを、納得していただくためには、将棋の歴史の研究会ではなく、大型将棋の中身をきちんと考える研究会を開催しなくてはと考えていますが、この件はまた別稿にて後日に。


本題に戻ります。大大将棋に残るshatranj variantsの痕跡は、まず第一に、将棋伝来の歴史にとって重要となりますが、次いで、大型将棋における成りのルールの復刻に関しても、大きな手がかりとなります。現状、shatranj variantsの文献を調査中ですので、結論はまだ先となりますが、本稿にて、いくつかの手がかりを具体的、覚え書き的に残しておきたく思います。

 

(この稿、後日に書きます。すいません。威勢よく書き進めていたのに、何も書かずということになりますが。)

 

出先からの投稿ですので、手元に画像がありません。

 

これ以降は、後日削除し書き直しますが、大大将棋の成りは、本来、以下の※注)のようなものだったのではないでしょうかというのが本稿の主張です。こんなところにまで、興味をもつ方は、知る限り、私を含めて6人ですが、ここも、古代ペルシアからの将棋伝来シナリオには、大きな注目点です。

 

以前の投稿のくり返しとなりますが、次の点、ご一考下さいませ。

1)二中歴の「敵玉一将則為勝」

このルールは、シャトランジ以外にあるでしょうか。ないのであれば、シャトランジの伝来可能性を検討する必要があると考えます。

 

2)王子の存在(玉将相当の駒が2つあるという点)

上と同じく、このようなルールは、shatranj variants以外にあるでしょうか。shatranj variantsと言ってしまうと、原始チェスも含まれてしまい範囲が広くなりすぎるわけですが、古代の象棋やマックルックにこのようなルールはありません。

 

3)成りのルール

(後日、本稿の書き直し版を参照のほど)

成りの豊富さを、将棋独自と見るか、シャトランジ起源と見るかという点です。もちろん、日本からペルシアへと渡ることもあり得ますが、当時の他の文物が、圧倒的に一方通行ですので、やはり、ペルシアから日本へという方向かと。

 

※注)

次の4点、象棊纂圖部類抄の大大将棋のところ、写本をミスしているのではないでしょうか。大大将棋の箇所は、他の点でも大きなミスをしていますから。()内は成りです。

 

写本の記述:飛龍(龍王)、行鳥(奔鬼)、猫又(龍馬)、踊鹿(方行)

もともとは:飛龍(方行)、行鳥(龍王)、猫又(奔鬼)、踊鹿(龍馬)

 

上の「もともとは」というのは、shatoranj variantsのルールならということです。大大将棋の写本は、初期配置が左右逆になっているということもあって、ある写本で、初期配置と合わせ、成りの対応関係も間違ってしまったのではと考えます。


シャトランジルールで考えますと、本来は、麒麟、鳳凰、師子、狛犬の4駒も成り先は別だったという空想も面白いでしょう。つまり、同じ列、すぐ下の駒に成るのです。

 

麒麟(奔獏)、鳳凰(奔王)、師子(夜叉)、狛犬(鳩槃)

 

ここでは、詳しくは書きませんが、納得のいく対応関係ではないかと思っています。

 

あと1点だけ。

成り先の変わってしまった(成り先を変えた)麒麟と鳳凰ですが、

麒麟(大龍)、鳳凰(金翅)

となっており、シャトランジで歩兵が金将に成るという、成りの本来の意味を踏襲しています。古代日本で、麒麟は龍と見なされていたわけです。ともかくも、中将棋のようにゲームデザインとしてプランされた成りではありません。こうした点でも、大大将棋は、よりシャトランジに近く、つまり、古式のルールを残しているということがわかります。大大将棋、中将棋の成立時期とも対応が取れており、この点でも納得がいきます。


(元投稿の最後の3行を削除しました:2015年11月25日に削除)