271)平安京と将棋盤:小将棋が横9目・縦10目だった可能性

大型将棋の駒の動きは古文書の記述と大きく違っており(特に、大大将棋)、駒の成りについても同じくです(特に、大将棋)。このあたりの状況は、摩訶大将棋の復刻本にて大きく取り上げています。通説と大きく違うのは、将棋盤のサイズです。また、勝敗のルールも違うだろうと思っています(玉将が勝敗を決める駒ではない可能性大です)。

 

大型将棋や将棋の起源についての通説は、たぶん、根本的な見直しが必要なのではないかと考えます。通説の根拠を論文や単行本から探してみても、その根拠・主張はかなり希薄です。たとえば、小将棋(=平安将棋)の盤のサイズは、8×8、8×9、9×8、9×9といろいろな説がありますが、その根拠をきちんと説明できる説があるのかどうか。平安大将棋の将棋盤が13×13マスだとされるのも同様で、根拠なしと言ってもいいくらいです。

 

こういう現状ですので、多少なりとも根拠があるという点で、摩訶大将棋の復刻本にも分がありそうです本稿、小将棋の将棋盤のサイズについてです。投稿270)の補足にて、平安京=将棋盤説の話題を取り上げましたが、本稿はその続きとなります。

 

平安京=将棋盤説をとる場合、歩兵の間隔は4マスになります(復刻本では図73と図74)。本ブログでは、投稿260の図(小将棋と平安大将棋のみ)となります。結果として、小将棋は、横9マス・縦10マスという結論を導いたわけですが、実は、同じ結論を、平安京の条坊の数からも導くことができるのです。

 

平安京の街路と小将棋の初期配置.
平安京の街路と小将棋の初期配置.

右図は、平安京の街路の交差点に小将棋の駒を並べたものです。摩訶大将棋と大大将棋については、平安京の1保を盤の1マスとみなしましたが、右図では、1坊(=4保)を1マスとみなしていることに注意して下さい。また、右図は、第一次平安京であり、大内裏(上部中央のうす茶の部分)の南北の長さは2坊となることにも注意して下さい。

 

小将棋の駒は、大大将棋の場合のように、東西に並ぶことになります。また、摩訶大将棋の復刻本でも取り上げましたが、大大将棋の駒は交点置きです。これと同じく、小将棋の駒も交点置きだとすれば、平安京(横9目)は小将棋(横9駒)の将棋盤にすることもできます。

 

マス置きとしてもよいのではないかと考える方もおられるでしょう(小将棋は横8マス・縦9マスの将棋盤を使ったということにする)。もちろん、そのような仮定もあり得るわけですが、他のいろいろな対応関係を考慮すれば、交点置きの方が妥当でしょう。たとえば、次の観点を重視すべきとしました。

 

1)二中歴の小将棋の記述では「目」という語句を使っています(目は交点を意味する)。たとえば「金将不行下二目」等々。小将棋の駒は目の上に置かれ、目の上を進むと考えるのが妥当でしょう。

2)象棋の成立時期は未だ不明ですが、ともあれ、象棋の駒は「目」に置かれます。そして、象棋の盤は、本稿で考えているとおり、横9目・縦10目です。日本と中国の将棋で、この一致は重要です。

3)大大将棋も、初期の摩訶大将棋も、駒は「目」に置かれています(復刻本の第5章を参照されたし)。

 

本稿は、投稿270)の補足(05/02の補足)をさらに補足するということで書いています。本稿と関連する件、まだ謎が多く、フロンティアの領域です。復刻本には入れませんでしたが、近々の論文には書きます。謎の詳細はまた後日の投稿としますが、考察されるべき点の主要部は次のとおりです。

 

1)摩訶大将棋 --> 大大将棋、摩訶大将棋 --> 小将棋という成立プロセスは、駒の動きや陰陽五行との関連を考えればほぼ間違いなかろうと思いますが、摩訶大将棋 --> 大将棋 --> 平安大将棋 --> 小将棋という成立プロセスは、現状、確定とまでは言えないでしょう。

 小将棋が盤の「目」を使う将棋だとすれば、それは大大将棋同様、かなり古い将棋ということになります。マス置きの大将棋と、交点置きの小将棋のどちらが古いのか。

 

2)大将棋が成立する前に、小将棋が成立したという場合、大型の将棋(摩訶大将棋のような)と小将棋の2種類の将棋(2種類の呪術のツール)の並存した時期があったのかも知れません。

 

3)上図では、平安京の将棋盤に、二中歴の初期配置を使い、二中歴の小将棋の駒を置きました。これが、当初よりそうだったのかは不明です。上図の将棋盤(平安京)は、9世紀半ばのものです。

 

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コメント: 1
  • #1

    MS (土曜日, 04 5月 2019 06:23)

    敢えて平安京を将棋盤として使うとしての前提ですが、駒を南北方向に並べると横に9マス分取れますので、交点に置かなくてもいいのではありませんか。