247)大型将棋の歩兵の間隔は4マス

投稿243)と投稿245)で、摩訶大将棋の将棋盤のサイズを横19マス縦16マスと書きましたが、説明の方をまだきちんとしていませんでした。本稿にて書きます。試遊をくり返していますが、19×19より19×16の方がゲームとしてもよさそうです(序盤が短くなりますが、これをどう見るかによります)。摩訶大将棋の以前の将棋盤は3盤作ってもらったのですが、また新しく発注を考えないといけません。

 

ともあれ、象戯圖にはきちんと「縦横各十九目」という文言が記載され、残っているわけですから、縦16マス説については、それなりの明解な根拠が必要となるでしょう。私としては、主観的には、長安から象棋の盤、平安京から摩訶大将棋の盤、大大将棋の盤が作られており、どれも定量的に一致しているということ、しかも、宮城と大内裏の位置と大きさも取り入れられているということ、それだけで十分なのですが、話しをしていて感じる限り、将棋史に無関心な人には十分でなさそうです。大大将棋の特殊性までがわかっていないと、根拠3点でなく、根拠2点だけとなるからです。

 

むしろ、はじめに挙げる理由としては、世界の大型将棋類からの、次の知見を挙げた方がいいのかも知れません。実は、今知られている世界の大型チェス、大型シャトランジのすべては、歩兵タイプの駒は、初期配置で4マスの間隔で並んでいます。図は示しませんが(Web検索にてすぐ確認可能)、次の将棋です。

 ・ドイツのCourier chess(横12マス・縦8マス)

 ・スペインのGrant Acedrex(横12マス・縦12マス)

 ・ペルシアのTamerlane chess(横11マス・縦10マス)

どれも、歩兵タイプの駒は、ちょうど4マスだけ間隔をあけて並んでいます。なお、Tamerlane chessには、仲人タイプの駒を加えたバージョンも存在しますが、この場合も、盤のサイズは変わらず、歩兵タイプは4マス間隔、仲人タイプは2マス間隔です。この間隔を、言わば、将棋類の世界標準と見るのです。なお、大型将棋類ではありませんが、

 ・中国の象棋(横9路・縦10路) ---> 歩兵タイプの間隔:2路

 ・ペルシアのシャトランジ(横8マス・縦8マス) ---> 歩兵タイプの間隔:4マス

であり、状況は変わりません。

 

象戯圖の摩訶大将棋を見れば、歩兵の間隔は7マス。大大将棋と大将棋は5マスで、平安大将棋は、縦横同数のマスだとすれば、7マスとなります。最前列の歩兵の間隔は、非常に重要なゲーム要素ですが、それを、将棋の進展に伴い変化させるのかという点、ご一考下さい。

 

そこで、摩訶大将棋の歩兵の間隔が、世界の大型将棋類と同じで、実は、4マスだったと考えます。すると、盤は縦16マスでなければなりません。摩訶大将棋の横19マス、縦16マスの将棋盤はこうして出来上がるのですが、その将棋盤は、平安京の街路のマス目とぴったり同じだったというわけです。投稿245)の図を参照下さい。

 

摩訶大将棋の将棋盤が、平安京を模したものだと見ると、次の点が、明解となります。

1)摩訶大将棋の成立した時期

2)将棋盤のサイズが順次小さくなっていった理由

これらの点、また別稿として投稿します。

 

ところで、中将棋は、歩兵の間隔は4マスで、かつ、盤は12×12の縦横同数となります。中世後半まで残った、この中将棋の正方形の盤が、他のおぼろげだった大型将棋の盤も正方形だとする間違いを生んだのかも知れません。大型将棋の横のサイズは伝えられた初期配置でわかりますが、盤の縦のサイズは伝えられなかったのでしょう。